木曽ヒノキ天然林の歴史
木曽地方の美しいヒノキ林は、天然更新された森林ですが、原生林ではありません。とても限られた地域に人の手が加わっていない地域もありますが、現在歩くことができる多くの森林は、我々人間との歴史の中で育まれてきた、貴重な存在です。
赤沢自然休養林を含めた、木曽ヒノキ天然林の歴史を振り返ってみましょう。
木曽地域は古くから良質なヒノキを産出することで知られていました。平安時代の面や仏像に始まり、神社仏閣の建築材、そして武士の時代になると築城の建築材としても重宝されます。
木曽の寒冷な環境下で育ったヒノキは、非常に緻密な年輪を刻み、同じ径の材木としては格段に強靭で耐久力もありました。
時の権力者たちは豊富な森林資源を擁する木曽地域を直轄領として、より強固な城や建築物を望み、ヒノキをはじめとする木材を使用してきました。
しかし戦国時代が終わり天下泰平の世になると、城下町も大きく育っていきます。江戸時代初期に訪れた建築ブームで木曽の木材は枯渇し、森林資源の危機が訪れました。
この時、尾張藩は木曽に材木役所を置き、直轄地として厳しい森林保護政策を敷いたのです。地元の住民が木を伐採することはおろか、入林すら禁じられ、その禁を破ったものは「木1本、首一つ」と呼ばれる処分を受けました。
保護の対象はヒノキに類する針葉樹のほか、ケヤキ、カツラなどにも及びました。代表的な針葉樹を木曽五木(きそごぼく)と称します。この5種類は、ヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキを指します。
住民が尾張藩の森林保護に苦しみながらも、森林は回復の道を歩み始めました。明治時代に入る頃には美しいヒノキ林が戻り、伊勢神宮の遷宮用材を産出する神宮備林に指定されます。
そして第2次世界大戦後は国有林に指定され、かつての森林荒廃を経験した赤沢一帯は、奇跡的に伐採を免れてきました。
1970年、全国初の自然休養林として、人と森林の共存を目指す新しい国有林の活用が始まったのです。
上松町観光ガイド「赤沢自然休養林のご案内」より抜粋
https://www.avis.ne.jp/~hinoki/01akasawa.html
木の特徴
「木」は山より伐採される瞬間「樹木」から「木材」に生まれ変わります。そして、「樹木」と「木材」はそれぞれの「とき(時)」に大きな仕事をし、私たちの人間の安定した暮らしを支え続けてくれます。
樹木のとき
「樹」がたくさん育っている森林にでかけると誰もが大きく深呼吸したくなります。これは、植物が発する活性物質「フィットンチッド」という成分を体全体でに取り込もうとするからです。このことを「森林浴」といいます。森林の中に身をおいただけで、人の心と体の健康に効果的な影響があるといわれています。
「フィットンチッド」とは
植物は、自ら他の物質に効果を及ぼす物質を発散しています。その中でも「ボラクタンス(揮発性活性物質)」が特にプラス効果があるといわれています。この主成分は「テルペン」という樹の香りの素で、精油が抽出できます。檜からは「ヒノキチオール」という精油が抽出でき森林のさわやかな香りをかもし出してくれます。
*樹木の特徴*
殺菌効果: 病原菌や細菌をよせつけません。
森林の香り: 人間の脳や心を静めるアロマテラピー効果があります。
森林の色: 緑色は、視覚的・心理的に落ち着きややすらぎを誘います。
きれいな空気: 樹木の枝葉がフィルターとなり空気中のチリ・ホコリが浄化されます。
酸素の供給源: 樹は二酸化炭素を吸収し、酸素を生成してくれます。
防風・遮光効果: 成長した森林は、背も高く枝葉がおい茂っていて突風や紫外線より守ってくれます。
防音効果: 樹の葉や幹が雑音を吸収してくれます。
木材のとき
建築材等としての木材は、伐採された後も呼吸し続けています。
現在、古い建物として100年以上のものから1000年前後のものまで、多くの神社仏閣や宿場町に残されています。
木材は空気中の湿度が高いときは水分を吸収、乾燥し湿度が低くなると水分を放出する調湿機能をもっており、日本のように高温多湿な気候風土に適し健康にもよく、耐久性も高く優れているからです。
*木材の特徴*
調湿: 湿度が高いと湿気を吸収し膨張し、乾燥すると水分を放出して収縮します。
吸収: 木材は紫外線を吸収し人への刺激を低減させてくれます。
丈夫: 100年かけて育った木は100年建築材として生きるといわれています。
美音: ピアノやバイオリンなどの楽器に使われるように、音を繊細にコントロールすることができます。
再生: 木材は再生産が可能な地球資源です。
健康: 木は有害物質を発しません。殺菌作用をもちカビ・ダニを寄せ付けません。
断熱: 木材の熱伝導率は非常に低く温かみを感じます。
耐火: 木材表面は炭化層になっているので芯まで燃えず、変形しにくいのです。
弾力: 外部からの衝撃にも弾力性をもって反発し、断裂しにくくなっています。
天然木曽檜の木材市売り「木曽官材市売協同組合」より抜粋
http://www.kisokan.com/
ギャラリー
木曽官材市売協同組合 本部・製品事務所
木材は人の手によって再生が可能な地球規模の資源です。植樹→育樹→伐採→消費→再び植樹…と再生を幾度となく繰り返す『輪廻(りんね)システム』が大事だと思います。その輪廻システムのサイクルにて、生産者から消費者へスムーズに流通するように業務を行っているのが、木曽官材市売協同組合です。
木曽桧製品のギャラリー
天然木曽檜の木材市売り「木曽官材市売協同組合」より抜粋
http://www.kisokan.com/
木曽官材市売協同組合 坂下事務所
植樹した人工林を間伐し、適度な光をいれ広葉樹等の導入を促し落葉が地表をおおう、健全で活力のある森林をつくることによって、土砂崩れを防ぎ、また、森林は二酸化炭素を吸収し、炭素を蓄え地球温暖化防止の大きな働きをします。生産された木材が国内で消費され、その資金で山の手入れができることを、森林は待ち望んでいます。
木曽桧木場のギャラリー
天然木曽檜の木材市売り「木曽官材市売協同組合」より抜粋
http://www.kisokan.com/